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バングラディシュ進出のポイントについて

バングラデシュ進出を検討されている方向けに、進出のポイントを法律情報を踏まえた上で、ご紹介しております。
2023年12月(7頁)
DOING BUSINESS in BANGLADESH
 DOING BUSINESS in BANGLADESH.pdf 




バングラデシュの税務の概要、運用について

バングラデシュの税務の概要、運用をご紹介しております。日本と異なる制度体系、優遇税制など進出には必須の情報です。各ブックレットの情報は概要であり、個別具体的な事例で異なる場合があります。

ご自身の事業が該当するかの確認、事業の法規制対象の確認など、バングラデシュへの進出にむけて疑問・質問がありましたら、お気軽にご相談ください。
2023年12月(3頁)
TAX Practice in BANGLADESH
 TAX Practice in BANGLADESH.pdf





バングラディシュの法律情報 Q&A

【バングラデシュ進出方法に関するQ&A


Q1. バングラデシュで事業を行う場合、どのような形態がありますか?
A1. 外国人投資家がバングラデシュに事業拠点を設立する場合、以下の4種類の形態のいずれかとなります。

  • (1) 現地法人
  • (2) 支店
  • (3) 駐在員事務所
  • (4) 連絡事務所

各形態により、営業活動や事業内容の範囲、親会社の責任範囲、設立手続き等が異なります。

Q2. バングラデシュの現地法人はどのような分類がありますか?
A2. バングラデシュ会社法の規定にもとづくと、以下の4つの種類が認められています。バングラデシュで日本企業が現地法人を設立する場合は、株式会社の非公開会社とするのが一般的です。

  • (1) 株式会社(非公開会社)
  • (2) 株式会社(公開会社)
  • (3) 保証有限会社
  • (4) 無限責任会社


Q3. 現地法人の責任負担はどのようになりますか?
A3. 現地法人のうち、株式会社は、株主がその有する株式の引受価格を限度とする責任を負います。保証有限会社は、清算時に、定款にあらかじめ定めた株主の責任の上限額を限度とする責任を負います。無限責任会社は、無制限の責任を負います(会社法5条)。

Q4. 公開会社と非公開会社の違いは何ですか?
A4. 非公開会社は、株式の譲渡制限があり、株式市場での株式発行をすることはできません(会社法90条)。また、株主は2名以上50名以下に制限されており、株式または社債の引受公募が禁止されています(同2条)。公開会社は、株主は7名以上で上限はありません。

Q5. バングラデシュへの進出や投資促進を担当する政府機関はどこですか?
A5. バングラデシュの主な投資促進機関は以下の通りです。
(1) バングラデシュ投資開発庁(Bangladesh Investment Development Authority, BIDA
バングラデシュの全ての投資活動を統括する投資促進機関です。免税等のインセンティブの付与、海外送金の承認、外国人駐在員へのワークパーミットの発行等、投資にかかる各種手続きを担当しています。投資開発庁(BIDA)はワンストップサービスを開始しており、35省庁の154種類のサービスをワンストップサービスにて手続きすることが可能です。

(2) バングラデシュ経済特区庁(Bangladesh Economic Zones Authority, BEZA
経済特区での会社設立、免許、操業を管理および監督する投資促進機関で、工業、雇用、製造および輸出の多様化を通した経済開発の促進を目的とし、都市開発の遅れている地域で経済特区を設立に取り組んでいます。202112月時点で97の経済特区が政府から承認を受けています。

(3) バングラデシュ輸出加工区庁(Bangladesh Export Processing Zones Authority, BEPZA
輸出加工区は、輸出手続きを簡素化した投資環境の整備を目的に設立され、BEPZAは、輸出加工区の外国投資の促進を担う政府機関です。202112月時点で、8の輸出加工区が設立されています。

(4) 官民連携協会(Public Private Partnership, PPP
官民連携を促進する機関で、公務員および民間セクターからの職員で構成されています。同協会が対象とする分野は、道路建設、廃棄物管理、鉄道、港湾、土地開発、電気事業、公共施設・社会インフラなどが挙げられます。

(5) バングラデシュハイテクパーク庁(Bangladesh Hi-Tech Park Authority, BHTPA
ハイテクパークは、情報技術設備や情報技術専門家のために整備された重点地域と位置付けられています。BHPTAは、ハイテクおよびソフトウェア技術パークの開発により、情報技術関連事業を促進しています。

Q6. 現地法人の設立のためにどのような手続が必要となりますか?
A6. バングラデシュでの現地法人の設立と登記は、バングラデシュ会社法で規定され、商業登記所(Register of Joint Stock Companies and Firms, RJSC)で管理されています。現地法人の設立手続は以下の通りです。

(1) 会社名登録
商業登記所へ社名を登録します。オンラインでの登録が可能です。社名登録の有効期間は30日で、その期間内に登記を申請する必要がありますが、有効期間は延長することが可能です。
(2) 会社法に則った定款の作成
会社法のひな形に基づき、基本定款には、会社名称、住所、資本や構成員の責任等について記載し、付属定款には、会社の規則や運営等について規定します。
(3) 銀行の仮口座開設
会社登記手続きの前に銀行に仮口座を開設し、資本金を振込み、送金証明書(Encashment Certificate)を取得する必要があります。
(4) 商業登記所(RJSC)への登記
商業登記所にて登記し、会社設立承認証(Certificate of Incorporation)を取得します。
(5) 営業許可証(Trade License)の取得
法人所在地の地方自治体に申請します。申請に必要な書類は業種によって異なり、毎年度更新が必要です。
(6) 納税者識別番号(Taxpayer’s identification Number, TIN)証明証の取得
国家歳入庁(National Board of Revenue, NBR)より、納税者識別番号(TIN)を取得します。 同庁のウェブサイトでの手続きが可能です。
(7) 付加価値税(VAT)の事業者登録証の取得
歳入庁(NBR)のウェブサイトで登録申請が可能です。土地または建物の登録や、輸入・輸出登録証の取得等のために必要な事業識別番号(Business Identification Number, BIN)を取得するためには、VATの事業者登録が必要です。
(8) 投資開発庁(BIDA)登録証の取得(必要な場合)
(9) 銀行口座の開設
会社の登記完了後他に必要な資料を銀行に提出し、正式な口座を開設します。
(10) 輸入許可証(IRC)・輸出許可証(ERC)の取得(必要な場合)
輸出入管理長官事務所(CCIE)が輸入許可証(IRC)および輸出許可証(ERC)を発行します。

Q7. 会社の商号は自由に決めることができますか?
A7. 現地法人を設立するための手続として、商業登記所から商号許可を所得する必要があります。商業登記所は、申請された商号が、既に登録済みまたは登録の手続き中の商号と類似していないかを確認したうえで、商号を承認します。なお、支店、駐在員事務所、連絡事務所は、親会社と同じ商号となるため、商号確認の手続きは不要です。商号の確認は商号登記所のウェブサイトから申請し、所定の金額を規定された銀行に支払います。同登記所が発行する商号許可は30日間有効で、その期間中に会社設立の申請をしなければなりませんが、有効期間は延長することができます。

Q8. バングラデシュで支店はどのように設立しますか?
A8. 支店の設立手続は以下の通りです。
(1) 投資開発庁(BIDA)に申請、登録
本社の定款、登記簿謄本、決算報告書等の書類を提出して申請します。提出書類は全て、バングラデシュ大使館または商工会議所による認証が必要です。日本語で作成されている書類は、翻訳のうえ、公証人による公証、日本の法務局・外務省による認証の手続きが必要です。
(2) 銀行口座開設
最低5万ドルの初期運営費を振込み、バングラデシュ中央銀行へ報告します。
(3) 納税者識別番号証明書の取得
国家歳入庁のウェブサイトから取得することができます。
(4) 営業許可証の取得
法人所在地の地方自治体に申請します。申請に必要な書類は業種によって異なり、毎年更新が必要です。
(5) 付加価値税の事業者登録証の取得
国家歳入庁のウェブサイトから取得することができます。
(6) セキュリティ・クリアランス
事務所の所在や代表者の人物照会のために、特別警察と国家安全情報局による面談が行われます。

Q9. 外国会社の支店であっても現地法人と同様に事業は可能ですか?
A9. バングラデシュでの営業活動は、投資開発庁(BIDA)が許可した範囲で可能ですが、海外送金の制限など、制約があります。

Q10. 外国会社の駐在員事務所・連絡事務所であっても現地法人と同様に事業は可能ですか?
A10. 駐在員事務所・連絡事務所は、収益を得ることや海外送金が原則として認められていないため、現地法人のように事業一般を行うことはできません。事業内容としては、現地の企業、供給業者、下請け企業、工場、輸入業者等と親会社との連絡調整を目的とすることが想定されています。また、支店と同様、外国会社としての扱いを受けるため、外国投資規制の対象となります。設立の手続きは支店とほぼ同様です。

Q11. バングラデシュにおいて種類株を発行することは可能ですか?
A11. 会社は株式ごとに異なる権利が付与された異なる種類の株式を発行することができます(会社法71条)。具体的には、強制償還条項付きまたは償還請求権付で優先株式の発行が認められており、償還に関する事項は付属定款にて定めることができます(154条)。

Q12. バングラデシュで会社を設立する際の最低資本金はいくらですか?
A12. 原則として、現地法人設立にあたり「最低資本金額」の規制はありませんが、銀行や保険等の金融業については、銀行40億タカ、一般保険4億タカ、生命保険3億タカなどの最低額が設定されています。また、一般的に外国人駐在員のワークパーミットを取得するために、5万ドルの振込みが必要だと考えられています。支店、駐在員事務所/連絡事務所も、初期投資として5万ドルの振込みが必要です。

Q13. バングラデシュで会社を設立する際に必ずバングラデシュ人を株主に入れる必要はありますか?
A13. 原則として、株主になるための特段の要件はなく、法人、個人、国籍、バングラデシュの居住者か否かは問われません。したがって、バングラデシュ人の株主は必須ではありません。

Q14. バングラデシュにおいて休眠会社という概念はありますか?
A14. 会社法の346条で休眠会社の除名について定められています。商業登記所の担当官は、会社が事業を運営していないと信じる合理的な理由がある場合、当該会社に文書を送付して確認し、30日以内に回答が得られなかった場合は、その後14日以内に書留にて2回目の文書を送付します。30日以内に回答が得られない場合は、官報にて会社の商号除名の通知を掲載することを通知します。担当官は、事業を行っていないとの回答を受け取るか、2回目の通知から30日以内に回答が得られない場合は、官報にて商号除名の通知を掲載し、掲載日から90日以内に反対の理由が示されない限り、商号は除名され、会社が解散する旨を文書にて当該会社に通知します。90日以内に反対の理由が示されない場合は、登録から商号を除名し、会社が解散した旨を官報に掲載します。取締役や株主の責任が残っている場合は、会社が解散していない場合と同様に責任を果たす義務は継続します。

【バングラディシュの労働法に関するQ&A】

Q1. バングラデシュの最低賃金額の規定はありますか?
A1. バングラデシュの最低賃金額は、業種ごとに異なるため、まずは規定の有無を確認することが必要です。輸出加工区(EPZ)は通達により、以下の通り、最低賃金額を定めています。業種や労働者の等級によって基本給や住宅手当、医療手当等の最低賃金額が定められています。
(1) 輸出加工区(EPZ)内企業労働者の最低賃金
 輸出加工区庁(BEPZA)の通達(20181127日付)にて、4つの産業、労働者の等級(高度熟練工から研修生(見習い))に分かれて基本給、住宅手当(基本給の50%)、医療手当(産業・等級問わず定額で1,450タカ)の最低賃金額が規定されています。各産業の最低賃金額(総賃金)は以下の通りです。

  1. 服飾・プラスチック製品その他関連産業等: 6,250タカ~14,950タカ/
  2. 電子機器・金属・自動車その他関連産業: 6,250タカ~10,750タカ/
  3. 繊維産業・化学薬品その他関連産業: 6,250タカ~14,950タカ/
  4. タオル・セーターその他出来高賃金を適用する産業: 6,2508,650タカ/

 上記の総賃金に加え、企業は食事または食費補助、通勤手段または通勤手当を給付しなければなりません。また、全労働者のうち50%の年間昇給率(基本給の昇給)を10%とし、残りの労働者の昇給率は5%を下回らないことが規定されています。

Q2. バングラデシュの雇用労働関連法令はどのようなものがあるのですか?
A2. バングラデシュの労働関係法令は主にバングラデシュ労働法(Bangladesh Labour Act, 2006)および労働規則(Bangladesh Labour Rules, 2015)により規定されています。その他、労働福祉基金に関する法令のほか、輸出加工区や経済特区ごとに労務に関する法令が定められています。

Q3. バングラデシュで労働者を雇用する際に必要な書類や手続きはどんなものがありますか?
A3. バングラデシュ労働法で、以下の文書の作成や手続きが定められています(第3条~第9条)。

  • (a) 就業規則(Service rule)の作成
  • (b) 採用通知書
  • (c) 写真付き身分証明書
  • (d) サービスブックの管理
  • (e) 雇用登録
  • (f) チケット・カード


Q4. 就業規則(Service Rule)には、どのような項目を記載すべきですか?
A4. 使用者は就業規則を作成し、労働者または労働組合から意見聴取をしたうえで必要に応じて変更し、検査官より承認を得る必要があります。また、労働法の規定より労働者に対して厳しい規定を定めることはできません(バングラデシュ労働法第3条、バングラデシュ労働規則第4条)。バングラデシュ労働規則に就業規則(Service Rule)の様式(Form1)が提供されており、記載すべき23項目が挙げられています。1) 労働者区分、2) 労働時間および休暇、3) 休暇の申請手続きおよび条件、4) 職場の閉鎖および再開の時期、業務の一時停止に関する使用者および労働者の権利と責務、5) 一時解雇の手続きおよび補償、6) 人員整理の手続きおよび補償、7) 労働者の心身障害の就労不能による退職の手続きおよび補償、8) 雇用終了の通知・条件・手続き・補償、9) 不正行為・停職の条件および補償、10) 定年退職の手続きと退職金、11)不測の事態による工場閉鎖が生じた場合の責任、12) 死亡給付金と手続き、13) 積立基金設立の手続き、14) 労働者の企業利益参加および福祉基金の設立、15) 医療給付、16) グループ保険の手続き、17) 昇進規程、18) 年収および昇給、19) 苦情処理手順、20) 罰金の手続き、21) 請負業者による業務(あれば)、22) 見習い労働者の採用手続き、23) その他関連事項。

Q5. 採用通知書にはどのような項目を記載すべきですか?
A5. バングラデシュ労働規則に、以下の記載項目が挙げられています。

  • (a) 労働者の氏名
  • (b) 父母、配偶者の氏名
  • (c) 住所
  • (d) 所属先、業務内容、入社日
  • (e) 労働者区分
  • (f) 賃金
  • (g) 各種手当(住居賃貸、医療教育、食事、通勤、祝祭、皆勤、一時給付金等)

 また、雇用条件や就業規則について明記する必要があります(労働規則第19条)。

Q6. 写真付き身分証明書にはどのような項目を記載すべきですか?
A6. 会社名、労働者名、業務内容、職位、採用日、住所、国民IDなどを記載し、使用者および労働者が署名したもので、バングラデシュ労働規則(Form6)にひな形が提供されています(バングラデシュ労働規則第19条)。

Q7. サービスブックはどのようなものですか?
A7. 労働者の勤務履歴で、使用者は全ての労働者にサービスブックを与えなければなりません。サービスブックは、労働者の氏名、住所、父母・配偶者の氏名、誕生日、身分を証明する事項、配属先、前職(あれば)の使用者の氏名と住所、雇用期間、配属先、賃金額、休暇の取得状況、労働者の品行を記載した労働者の写真付きのもので、バングラデシュ労働規則にて様式が提供されています。入社時にサービスブックを所持している労働者は、新しい使用者に提出します。サービスブックは、雇用期間中は使用者が保管し、雇用期間終了時に労働者に返却しなければなりません(バングラデシュ労働法第6条、第7条、第8条)。使用者は、労働者を無期雇用として採用した日から1か月以内に必要事項を記載しなければなりません(バングラデシュ労働規則第21条)。

Q8. 雇用登録はどのようなものですか?
A8. 使用者は、労働者の氏名、誕生日、父母の氏名、採用日、業務内容、労働時間、休憩、食事提供、休日、所属する職務上のグループ(あれば)、シフト制の場合は担当シフト、その他定められる事項を記載した雇用登録を整備し、検査官から求めがあった場合はいつでも提示できるようにしておかなければなりません(バングラデシュ労働法第9条)。雇用登録はベンガル語で作成されますが、必要に応じてベンガル語とともに英語で作成することもできます(バングラデシュ労働規則第23条)。バングラデシュ労働規則にて様式が提供されています(Form8)。

Q9. 労働者を採用する際に発行するチケット・カードはどのようなものですか?
A9. 使用者は、無期雇用労働者、代替労働者、非正規雇用労働者、臨時雇用労働者、見習い労働者の区分に分けられたチケット・カードを全労働者に支給しなければなりません(バングラデシュ労働法第9条)。

Q10. バングラデシュにおいて試用期間の規制はありますか?
A10.労働法にて、試用期間について、事務員は6か月、その他の労働者は3か月と規定されていますが、熟練労働者については、労働者の技能を最初の3か月の試用期間で正しく把握することができないと判断された場合は、試用期間をさらに3か月延長することが可能です。試用期間を終了した労働者は、終了証明が発行されなくても、無期雇用労働者とみなされます。

Q11. バングラデシュの労働時間の規制は日本と同じですか?
A11. バングラデシュ労働法には、1日当たりの最大労働時間は8時間と規定されていますが、時間外労働手当が支給される場合には、1日当たり10時間までの労働が認められます。時間外労働が発生する場合は、2時間以上前に労働者に通知し同意を得なければなりません(バングラデシュ労働規則第99条)。週当たりの最大労働時間は48時間と規定されています。時間外労働手当が支給される場合は、1週当たり60時間以内の労働が認められるものの、年間で1週当たりの平均労働時間が56時間を超えてはなりません(バングラデシュ労働法100条、102条、108条)。また、労働者の拘束時間は、政府による特別の承認がない限り、休憩を含めて10時間を超えてはなりません(同105条)。女性の労働者は、本人の書面による同意がない限り、午後10時から午前6時までの時間帯に勤務させてはならないと定められています。同意した書面は、本人が取り下げない限り、12か月有効です。また、女性の夜間勤務は登録しなければなりません。夜間勤務の同意書および取り下げ申請、夜間勤務の登録フォームはバングラデシュ労働規則で定められている様式にて記載されなければなりません(同109条、バングラデシュ労働規則第103条)。バングラデシュに進出している外国会社は、ラマダン期間中の勤務時間の前倒しまたは短縮や、お祈りの時間として昼食休憩を長くするなど対応している会社もあります。

Q12. バングラデシュの休憩時間の規制はありますか?
A12. 1日当たり5時間以上勤務する労働者は、30分の休憩(食事休憩含む)を取得させなければなりません。同様に、1日当たり6時間以上勤務する労働者は、1時間の休憩、8時間以上勤務する労働者は1時間の休憩または30分の休憩を2回取得させなければなりません(バングラデシュ労働法101条)。なお、2013年の労働法改正法にて、建設や溶接などの危険を伴う業務に従事している労働者の労働時間および休憩時間については、別途定める旨が規定されています。

Q13. バングラデシュの時間外労働の上限はありますか?
A13. Q11を参照してください。

Q14. バングラデシュの時間外労働手当の割増率はいくらですか?
A14. バングラデシュ労働法にて規定されている労働時間を超過した場合の時間外労働手当は、通常の賃金および手当(あれば)の2倍です(バングラデシュ労働法108条)。別段の合意がなければ、時間外労働手当は、以下の計算式で算出されます(バングラデシュ労働規則第102条)。
 月給労働者の場合:
 時間外労働手当={月額基本給および手当+一時または中間賃金(ある場合)×2×時間外労働時間/208時間}

Q15. バングラデシュにはどのような有給休暇がありますか?
A15. バングラデシュ労働法では、年次有給休暇、祝祭休暇、臨時休暇、病気休暇、産休のほか、週ごとの休日(週休)が規定されています。

Q16. バングラデシュの年次有給休暇は何日ですか?
A16. 1年間継続勤務した全労働者に対し、翌年から、18日の勤務日数ごとに1日の有給休暇が与えられます(茶プランテーションの労働者は22日の勤務日数ごとに1日、新聞社の労働者は11日の勤務日数ごとに1日)。18歳以下の労働者は、工場勤務の場合は15日ごと、茶プランテーションの労働者は18日ごと、店舗や商業施設の労働者は14日ごとに1日の有給休暇が与えられます。年次有給休暇の間に週休や祝祭日があたる場合は、これらの休日も年次有給休暇に含まれます。労働者が12か月間に有給休暇を消化しなかった場合は、翌年に繰り越すことができますが、有給休暇の日数が工場または道路交通施設の労働者は40日(18歳以下の場合は60日)、店舗、商業施設等の労働者では60日(18歳以下の場合は80日)に達した場合は、それ以上取得することはできません。しかし、使用者より取得を却下された有給休暇分は含まれません(バングラデシュ労働法第117条)。

Q17. 未消化の有給休暇は換金して支給しなければなりませんか?
A17. 労働者が未消化の年次有給休暇の換金を希望した場合、年に1回まで、全年次有給休暇の半分まで換金ができる旨が定められています。労働者が死亡した場合、未消化の休暇分の賃金を、指定または法定の受取人に支払われなければなりません(バングラデシュ労働規則第107条)。

Q18. バングラデシュの祝祭休暇は何日ですか?
A18. 年間11日の有給の祝祭休暇が認められています。祝祭休暇に勤務する場合は、2日の補償休暇および代休が与えられなければなりません(バングラデシュ労働法118条)。使用者は、共同交渉代理人と協議のうえ、毎年1231日までに翌年の祝祭休暇を決定しなければならず、同休暇は11日以上でなければなりません。共同交渉代理人が存在しない場合は参加委員会と協議のうえ、同委員会が存在しない場合は、労働者と可能な限り協議し、祝祭休暇を決定しなければなりません(バングラデシュ労働規則第110条)。

Q19. バングラデシュの臨時休暇は何日ですか?
A19. 年間10日の有給の臨時休暇が認められていますが、翌年に繰り越すことはできません(バングラデシュ労働法115条)。雇用者は、可能な限り、同一家族に属する使用者(配偶者や子)が同じ日に臨時休暇を取得できるよう配慮すべきである旨が規定されています(バングラデシュ労働規則第109条)。

Q20. バングラデシュの病気休暇は何日ですか?
A20. 年間14日の有給の病気休暇が認められています。病気休暇の取得にあたり、使用者が指定した医師による診断が必要で、診断書に記載されている療養に必要な期間の休暇を取得することができます。また、病気休暇は翌年に繰り越すことは認められていません(バングラデシュ労働法116条)。一般的に、多くの会社は、勤務中の事故により一時的に勤務できない労働者に対して治療費の補填に加え、有給の特別傷病休暇を認めています。

Q21. バングラデシュの週ごとに決められた休日(週休)はありますか?
A21. バングラデシュ労働法では、休日の曜日に関する規定はありませんが、店舗や商業施設等の労働者は週に1.5日、工場の労働者は週に1日に休暇を取得する権利が与えられています。いずれも、週休に対して賃金から控除することはできません。事情により週休が取得できない場合は、3日以内に他の日に代替して取得させなければなりません(バングラデシュ労働法103条、104条、バングラデシュ労働規則第101条)。また、週休をとらずに連続して10日以上の労働をさせることはできません(バングラデシュ労働規則第101条)。労働者が希望し団体交渉代理人または参加委員会との会議に参加する場合、労働者は週休に勤務することができ、その休日分を祝祭休暇に加えることができます。その場合、休日に働くことに対し時間外手当は支払われません(バングラデシュ労働法(改正法)2018104条)。また、バングラデシュでは、政府機関や銀行を含め、金曜日及び土曜日が週休です。

Q22. 無休で店舗を営業することはできますか?
A22. 店舗、商業施設または工業施設は、週に1.5日以上は完全に休業しなければいけません(労働法第114条(1))。なお、駅や空港、野菜や肉、乳製品を扱う店舗、医療品を扱う店舗、電力や水の供給業者、美容院、飲食店等など、一定の店舗は除外されます。また、同じ店舗または商業施設において、複数の事業が行われており、そのうち主要な事業が店舗休業の規定の対象外である場合は、当該店舗または商業施設全体が対象外となります。一方、本規定の対象外となる店舗や商業施設であっても、市場やショッピングモール内にある場合は、週に1.5日以上は休業しなければなりません(同条(6))。

Q23. バングラデシュは産休や育児休暇はありますか?
A23. バングラデシュ労働法で産休について規定されており、産前8週間産後8週間の産休が定められています。産前10週間産後10週間以内は、重労働や長時間の立ち仕事、健康を害する可能性のある仕事をさせてはなりません(バングラデシュ労働法第45条、第47条)。
出産前に6か月以上勤務している労働者は、産前8週間産後8週間について出産給付金を受ける権利があります。ただし、既に2人以上の子供がいる場合は、出産給付金は支給されません。年次有給休暇および医療休暇は与えられ、更に休暇が必要な場合は、使用者は無給休暇を与えることができます(労働規則第38条)。出産給付金支給の対象となっている労働者は、出産8週間前または産後7日以内に口頭もしくは書面にて使用者に申請しなければなりません(同第46条)。出産給付金は、出産給付金の申請があった日の直近3か月の実働賃金をもとに算出され、現金で支給されます(同第48条)。
バングラデシュ労働法には、育児休暇についての規定されておらず、使用者の裁量に任されています。

Q24. バングラデシュにおいて雇用契約が終了する場合としてどのような場合が規定されていますか?
A24. バングラデシュ労働法では、次の場合に、雇用契約が終了すると規定されています。

  • (1) 使用者による雇用契約の終了
    • (a) 労働者による雇用契約の終了
    • (b) 一時解雇
  • (2) 人員整理
  • (3) 労働者の精神的または身体的な障害により就労が不能な場合
  • (4) 労働者の不正行為や違法行為による解雇
  • (5) 定年退職


Q25. 使用者による雇用の終了についてどのような規制がありますか?
A25. 使用者は、以下の措置をとることで労働者を解雇することができます。解雇の理由についての規制は定められておらず、無条件での解雇が可能です(バングラデシュ労働法第26条)。

  • (1) 無期雇用労働者の雇用を終了する場合

 月給労働者の場合は、120日前までの書面による通知、その他の労働者は、60日前までの書面による通知が必要です。労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額な方を補償金として支払わなければなりません。補償金は労働法にて定められている他の給付とは別に支払われます。

  • (2) 非正規雇用労働者の雇用を終了する場合

 月給労働者の場合は、30日前までの書面による通知、その他の労働者は、14日前までの書面による通知が必要です。
 無期雇用および非正規雇用ともに、通知せずに労働者の雇用を終了したい場合は、上記の通知期間日数の賃金を支払うことで、可能です。

Q26. 労働者による雇用の終了についてどのような規制がありますか?
A26. 無期雇用労働者は、60日前に使用者に書面による通知をすることで退職することができます。無期雇用労働者に支払われる謝礼金として、勤務年数が5年以上10年未満の場合は勤務年数ごとに14日分の賃金または一時給付金の高額の方、勤務年数が10年以上の場合は勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額の方が支払われます。非正規雇用労働者は、月給労働者の場合は30日前、その他の労働者の場合は14日前に使用者に書面にて通知をすることで退職することができます。無期雇用、非正規雇用ともに、通知をせずに退職したい場合は、通知期間日数の賃金を放棄することで退職することができます。労働者が許可や通知なしに10日以上欠勤した場合は、使用者は当該労働者に対して、欠勤理由を明らかにし、10日以内に職務に復帰するよう書面で通知しなければなりません。当該労働者が決められた期間内に欠勤理由を明らかにせず、職務にも復帰しない場合には、さらに7日間の猶予を与えなければなりません。その期間を過ぎても欠勤理由を明らかにせず、職務にも復帰しない場合は、欠勤開始日をもって退職とみなされます(バングラデシュ労働法第27条)。

Q27. 一時解雇についてどのような規制がありますか?
A27. バングラデシュ労働法にて、「一時解雇(Lay-off)」とは、石炭、電力、原材料、在庫の不足、または機械の故障により、使用者が労働者に雇用を提供しない、拒否する、またはできないこと」と定義され、一時解雇の対象となる労働者や補償金について定められています。勤務期間が1年以上の労働者を一時解雇する場合、以下の補償金を支払わなければなりません。

  • (a) 一時解雇の期間が1日から45日の場合
  •  週休を除く一時解雇の期間、基本給および手当の半額と住宅手当全額
  • (b) 一時解雇の期間が60日以上の場合
  •  使用者と労働者の間で別段の合意がない限り、46日目以降は、基本給および手当の4分の1と住宅手当の全額

一時解雇が45日を超える場合は、人員整理により雇用を終了することができます(バングラデシュ労働法第16条、第18条)。

Q28. 人員整理による雇用の終了についてどのような規制がありますか?
A28. 人員整理により雇用を終了する場合、1年以上継続勤務した労働者に対しては、1か月前に人員整理の対象である理由を記載した文書による通知または1か月の賃金を支給し、検査官および団体交渉代理人(存在する場合)に通知を提出し、労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金にあたる補償金または一時給付金の高い方を支給しなければなりません。また、人員整理が一時解雇の代わりになされるときは、通知は不要ですが、さらに15日分の賃金にあたる補償金を上乗せして支払う必要があります。また、特定の分野の労働者を人員整理する場合、使用者と労働者間に別段の合意がない限り、最も新しく雇用された労働者が人員整理の対象となります(バングラデシュ労働法第20条)。

Q29. 労働者の精神的または身体的な障害により就労不能となった場合の雇用の終了についてどのような規制がありますか?
A29. 使用者は、労働者が身体的または精神的な障害により就労不能となった場合、もしくは医師より継続的な病気であることが証明された場合は解雇することができます。労働者の勤務年数が1年以上の場合は、勤務年数ごとに30日分の賃金額または一時給付金の高額の方を補償金として支払わなければなりません(バングラデシュ労働法第22条)。なお、労災に該当する場合は、補償金の支払い等が定められています(Q35参照)。

Q30. 労働者の不正行為や違法行為による解雇の場合は、どのような規制がありますか?
A30. 労働者の行為が以下に該当する場合、通知なしに解雇することができます(バングラデシュ労働法第23条)。

  • (a) 犯罪で有罪になった場合
  • (b) 不正行為について、審査委員会で解雇が認められた場合(審査委員会による審査についてはQ31を参照してください)


やむを得ない事情により不正行為を犯した労働者は、不正行為による解雇ではなく罰則(退職、1年を超えない降格または減給・昇進の保留、昇給の保留、罰金、7日を超えない賃金または特別手当なしの停職、厳重注意および警告)を受けるに止めることもできます。やむを得ない事情による不正行為で解雇される労働者は、勤務年数が1年以上の場合は、勤務年数ごとに15日分の賃金額を一時給付金として支給されなければなりません。しかし、以下の(b(g)に該当する不正行為で解雇された場合は、いかなる一時給付金も受ける権利がありません。

不正行為として、以下の行動が挙げられています。

  • (a) 上長からの適法または正当な指示に対して、故意に従わないこと
  • (b) 事業や使用者の資産に関連した窃盗、横領、詐欺、不正行為
  • (c) 業務に関連した贈収賄
  • (d) 常習的および一度に10日を超える無断欠勤
  • (e) 常習的な遅刻
  • (f) 常習的なルール違反や規則違反
  • (g) 職場における無秩序、暴動、放火、破壊行為
  • (h) 常習的な職務怠慢
  • (i) 検査官から承認を受けた、業務遂行や規律を含む雇用に関するルールの常習的な違反
  • (j) 使用者の公的な記録の改変、偽造、不当な変更、損傷、損害をもたらすこと


Q31. 不正行為または違法行為による解雇の場合に、必要な手続きはありますか?
A31. バングラデシュ労働法第24条に、手順が定められています。

  • (a) 当該労働者に対する主張(容疑)を文書にて記録する
  • (b) 当該労働者に対し、文書の写しおよび7日間以上の釈明の期間を与える
  • (c) 当該労働者に聴聞の機会を与える
  • (d) 使用者側および労働者側の同数の代表者で構成される審査委員会による審査で違反が認められる
  • (e) 使用者または管理者が解雇を決定する

不正行為について審査中の労働者は停職となり、停職期間は、法廷に先立つ審理中でない限り、60日を超えることはできません。停職中、労働者は特別手当およびその他の手当を満額支給されます。審査により、不正行為が認められた場合は、停職中の賃金を支給される権利を失いますが、特別手当は支給されます。一方、不正行為が証明されなかった場合は、停職中も勤務期間とみなされ、既に支給されている特別手当と調整のうえ、該当期間の賃金を支給されます(バングラデシュ労働法第24条)。

Q32. 定年退職に関して、どのような規制がありますか?
A32. 定年は満60歳で、サービスブックに記録されている生年月日に基づきます。労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金または一時給付金の高額な方を謝礼金として支払わなければなりません。謝礼金は労働法にて定められている他の給付とは別に支払われます。定年退職後も、契約に基づいて労働者を雇用することができますが、その場合は、個別の労働契約書の内容に準拠します(バングラデシュ労働法第28条)。

Q33. 雇用を終了する際の手続きについて規制がありますか?
A33. 労働者は、退職の理由を問わず、未消化の年次有給休暇がある場合は、未消化の日数に応じた賃金の支払いを受ける権利があります(バングラデシュ労働法第11条)。また、積立基金の会員になっている労働者は、退職の際に、積立基金から給付を受けることができ、給付金分は控除されません(同法第29条)。
 退職者に支払われるべき賃金や手当は、退職日から30日以内に支払われなければなりません(同法第30条)。代替労働者および臨時雇用労働者を除く労働者は、業務証明書を使用者から受ける権利があります(同法第31条)。使用者は、労働者から同証明書を求められた場合は15日以内に発行する必要があります(バングラデシュ労働規則第31条)。
 また、退職した労働者で、退職に異議がある者は、再考を求める権利をもち、雇用終了の通知を受けた日から30日以内に、これに対する異議を書面にて使用者に通知することができます。同通知を受け取った使用者は、30日以内に回答する義務があります。労働者は、本手続きを経ないで訴訟を起こすことはできませんが、使用者が通知に対する回答を怠った場合や労働者が回答に納得しない場合は、対象事案を労働裁判所に訴えることができます(バングラデシュ労働法第33条)。

Q34. 自然災害や感染症拡大などによる業務停止について規制がありますか?
A34. バングラデシュ労働法第12条に、火災、災害、機械の故障、電力供給の停止、感染症拡大、暴動、その他使用者の力が及ばない不測の事態により、事業のすべてまたは一部を停止する場合の規定が定められています。業務停止が1日を超える場合は超過分の賃金が支給されますが、3日を超える場合は、一時解雇(Q27参照)の扱いとなります。
 また、使用者は、違法のストライキが起きた場合に事業施設のすべてまたは一部を閉鎖することができ、ストライキに参加した労働者には賃金は支払われません。ストライキが起きた部署以外の部署も影響を受けて閉鎖した場合、影響を受けた労働者は3日間は一時解雇の場合と同様に補償金が支払われます(バングラデシュ労働法第13条)。

Q35. バングラデシュに労災についての規定はありますか?
A35. バングラデシュ労働法第12章に労災に関する使用者の責任や補償金が規定されています。勤務中に生じた事故により身体を負傷した場合、以下の場合を除き、使用者は補償金を支払う義務があります(同法第150条)。

  • (1) 負傷による全体または部分的な労働能力の損失が3日を超えない場合
  • (2) 労働者の飲酒または薬物使用に起因する事故、安全確保を目的とした明確な指示または規則に故意に従わなかった場合、労働者の安全確保を目的として支給されていることを知りながら、労働者が故意に安全装備を外したり、無視した場合に直接起因する事故による負傷の場合

 バングラデシュ労働法により特定された業務(Part A)により指定の職業病に罹患、特定された業務(Part B)に6か月を超えて継続的に勤務し、指定の職業病の罹患した労働者は、本条で規定する労災とみなされ、使用者が反証しない限り、勤務中に生じたとみなされます(第150条)。
 補償金は、負傷、永久全労働不能、永久一部労働不能、一時労働不能の区分に分けて定められています。同一の事項により複数の負傷があった場合は、永久全労働不能による補償金額を超えない範囲で増額されます(第151条)。
 また、バングラデシュ労働法に労働者が死亡した場合の補償金について規定されています。2年以上勤務した労働者が勤務中に死亡した場合は、当該労働者の勤務年数ごとに30日分の賃金に相当する補償金、職場での勤務中または事故による死亡の場合は、勤務年数ごとに45日分の賃金に相当する補償金または一時給付金の高額の方が、受取人または扶養家族に支給されます(第19条)。

Q36. 賃金支払いについてどのような規制がありますか?
A36. 賃金期間は使用者が定めることができますが、1か月を超えることはできません(バングラデシュ労働法第122条)。賃金は、賃金期間締め日から7日以内の営業日に支払われなければなりません。退職者の場合は、30日以内の営業日に支払われなければなりません(同第123条)。またすべての賃金はバングラデシュ通貨タカの現金または銀行小切手によって支払われます。労働者から要請があれば、銀行振込みによる支払いも可能です(同第124条)。

Q37. 賃金からの控除が可能な項目は定められていますか?
A37. バングラデシュ労働法第125条で規定されている賃金からの控除が可能な項目は以下の通りです。

  • (a) 罰金
  • (b) 無断欠勤
  • (c) 保管義務があるにも関わらず、労働者の怠慢によって生じた商品の損害や損失、金銭の消失が生じた場合
  • (d) 使用者より宿泊施設・住居が与えられている場合
  • (e) 政府による承認され使用者が支給している業務に必要な原材料や設備以外の設備
  • (f) ローンや前借りの回収、賃金の過払いの調整の場合
  • (g) 所得税
  • (h) 裁判所や管轄の当局による命令に従う場合
  • (i) 法定または政府により承認された積立基金の会費、前金の支払いに該当する場合
  • (j) 政府により承認された積立基金や公的保険機関による保険金の支払いに該当する場合
  • (k) 使用者によって形成され、公的認可を受けた労働者ならびにその家族の福祉のための基金への会費で、労働者による書面の同意がある場合
  • (l) 賃金からの天引きによる団体交渉代理人(CBA Union)への会費


Q38. バングラデシュも社会保障制度がありますか?
A38. 無期雇用労働者を雇用する会社は、現行の保険法に従い、グループ保険に加入しなければなりません。グループ保険は永久労働不能および死亡の場合に給付金が支払われます。保険料は使用者が支払う必要があり、労働者の賃金から控除することはできません(バングラデシュ労働規則第98条)。労働者が死亡した場合は、会社が保険金受給の手続きを行い、受取人に直接支払われるよう手配しなければなりません(バングラデシュ労働法第99条)。

Q39. 法律で定められた積立基金制度はありますか?
A39. バングラデシュ労働法第17章およびバングラデシュ労働規則第16章にて、積立基金(Provident Funds)について規定されています。積立基金の設立は、使用者の義務ではありませんが、全労働者の4分の3以上の書面による要望を受けた場合は、設立しなければなりません。また、要望を受けた日から6か月以内に同基金の規約を定め、開始しなければなりません。同基金への積立金は、労働者の月給の78%相当額と規定されており、使用者も労働者と同額を積み立て、同基金の維持管理費を負担しなければなりません(バングラデシュ労働法第264条)。勤務期間が1年以上の労働者が同基金に加入することができます(バングラデシュ労働規則第238条)。使用者は小切手または銀行為替手形等、毎月決められたかたちで、月末より15日以内に管理費を支払う必要があります(バングラデシュ労働法第267条)。同基金の積立金やその他経費のために、労働者の賃金や手当を減額することはできません(同法第272条)。

Q40. バングラデシュに年金制度はありますか?
A40. バングラデシュの法令では、民間企業の労働者対象の年金制度についての規定はありません。

Q41. バングラデシュにおいて女性労働者に対してのみ適用される法令はありますか?
A41. バングラデシュ労働法にて、本人の同意のない深夜勤務(午後10時~午前6時)の禁止や産休の規定が設けられています。産前8週間産後8週間の産休が定められており、産前10週間産後10週間以内は、重労働や長時間の立ち仕事、健康を害する可能性のある仕事をさせてはなりません(バングラデシュ労働法第45条、第47条)。また、出産前に6か月以上勤務している労働者は、産前8週間産後8週間について出産給付金を受ける権利があります。その他、同法第345条にて、同一労働同一賃金を規定しており、性別や障害の有無で差別してはならないと定められています。青少年労働者と同様に、政府が定める有害業務に従事させることは認められておらず、危険な機械の取り扱いも制限されています。地下または水中での労働は認められていません(第87条)。また、同法332条にて、女性労働者の職位や地位に関わらず、女性の慎み深さや尊厳に対し、下品、不作法または不快感を与える行動をとってはならないと規定されています。

Q42. 会社の業績が良くない場合でも賞与を支払わなければなりませんか。
A42. バングラデシュ労働規則第111条にて、勤務期間が1年以上の労働者は年に2回の祝祭賞与を与えられなければならないと規定されています。同賞与の1回あたりの金額は基本給を超えることはできません。

Q43. バングラデシュで労働組織は自由に作れますか?
A43. バングラデシュ労働法第13章で労働組合に関して定められており、全ての労働者は、労働組合を設立する権利を有し、労働組合の規約に従い、自身の選択で労働組合に加入する権利を有すると規定されています。なお、労働組合は、事業場で雇用されている労働者の20%以上が加入していないと登録することはできません。ただし、同一の使用者のもと、事業場に複数の労働組合が同一業界で連携して活動している場合は、1つの労働組合とみなされます。1つの事業場につき、労働組合は3組織まで登録できます(第179条)。また、労働組合は、連盟を組織または加入する権利を有し、当該組合または連盟は、国際組織や労働者連盟と提携する権利があります。なお、女性従業員が20%を占める組織においては、労働組合の執行委員会に最低10%の女性組合員を含めなければなりません(労働法第176条)。労働組合は、役員の情報、加入者リストや規約等を提出して、登録する必要があります(第177条、第178条)。また、使用者は団体交渉代理人が要請する組合会費を組合員である労働者の同意を得たうえで賃金から控除し、15日以内に団体交渉代理人に預け入れなければなりません(第204条)。

Q44. 労働組織の構成員への対応について注意すべき点はありますか?
A44. 使用者や使用者組織は、以下の行動を禁止されています(第195条)。

  • (a) 雇用契約で、労働組合への加入または継続に関わる労働者の権利を制限する条件を課すこと
  • (b) 労働組合の組合員または役員であるか否かの条件で、雇用または雇用の継続を拒否すること
  • (c) 労働組合の組合員または役員であるか否かの条件で、雇用、昇進、雇用条件、労働条件に関して労働者を差別すること
  • (d) 労働組合の組合員または役員であることまたはなること、他の者になるよう勧めること、労働組合の設立、活動、拡大に参加することを理由に、労働者を解雇すること、または解雇することや雇用に害を及ぼすと脅迫すること
  • (e) 便宜を図ることによって、労働組合の組合員または役員になることを控えるまたは役職から退任するよう労働者等を説得すること
  • (f) 威嚇、強制、圧力、脅迫、監禁、身体的な傷害、水、電力、電話設備の切断、その他の手段によって、団体交渉代理人に対し、和解または和解の覚書への署名を強要または強要を試みること
  • (g) 適法に実施される団体交渉代理人の選挙を妨害または影響を与えること
  • (h) 適法または違法ではないストライキの間に労働者を新規で雇用すること。ただし、仲裁人が深刻な損害を与える可能性が高いことを認め、一時的な雇用または限られた人数の労働者の雇用を認めた場合は除きます。
  • (i) 参加委員会が推奨した措置を故意に講じないこと
  • (j) 労働争議に関し、団体交渉代理人とのコミュニケーションに返答しないこと
  • (k) 本法の規定に反して、労働組合の議長等の役員を異動させること(第187条:労働組合の議長および役員は、本人の同意がない限り、他の地域(District)に異動することはできません)
  • (l) 違法なロックアウトを開始、継続、または他の人々を参加するよう扇動すること


Q45. 団体交渉代理人について、どのような規定がありますか?
A45. 労働法第2条(52)にて「団体交渉代理人は、事業場や事業場グループにおける団体交渉のための労働者の代理人である事業場もしくは事業場グループの労働組合または労働組合連盟」と定義されています。事業場で労働組合が1つの場合は、当該労働組合が団体交渉代理人とみなされます(第202条(1))。一方、事業場に複数労働組合が存在する場合は、選挙委員を任命して団体交渉代理人の選挙を実施するか、労働組合または使用者からの申請に基づいて労働局長が実施する秘密投票により、事業場の団体交渉代理人を決定します(第202条(2))。団体交渉代理人の任期は通常2年で、複数の組合からなる連合の場合は、3年です(第202条(16))。全ての使用者は、事業場に団体交渉代理人のための執務室を割り当てなければなりません(第202条(26))。

また、団体交渉代理人は、事業場に関する団体交渉について以下の権限を有します(第202条(24))。

  • (a) 労働者の失業、労働条件または労働環境に関する使用者との交渉
  • (b) 訴訟手続きにおける労働者の代表
  • (c) 適法なストライキの通知、宣言
  • (d) 本法の規定に基づき設置された福祉施設、積立基金、労働者企業利益参加基金の評議委員会において労働者の代表を任命すること
  • (e) 本法に基づき、労働者または労働者グループを代表して訴訟を進めること


Q46. 労働関連の紛争解決に関する規制はありますか?
A46. 労働争議は、使用者または団体交渉代理人によって労働法の規定に従って開始されなければ認められません(労働法第209条)。労働争議の解決について、以下の通り規定されています(労働法第210条)。

  • (a) 使用者または団体交渉代理人は、労働争議が起こる可能性を認識した場合は、相手側に書面にて通知しなければなりません。
  • (b) 通知を受けた当事者は、15日以内に相手側と協議のうえ、問題や合意に至るための考え方について協議する代表者会議を設定しなければなりません。
  • (c) 協議を経て合意に至った場合は、合意書に双方が署名し、使用者が政府に提出しなければなりません。会議が整わなかった場合や最初の会議から1か月以内もしくは双方の合意によりさらに延長した期間に対話により合意に至らなかった場合は、管轄の調停人に対し、調停による解決を書面にて求めることができます。要請を受けた調停人は、10日以内に当事者間の会議を開催しなければなりません。
  • (d) 調停を経て、合意に至った場合は、調停人は双方が署名した合意書および報告書を政府に提出します。一方、調停人が要請を受けて30日間に合意に至らなかった場合、調停の不成立または両当事者が書面により合意した延長期間、調停が継続されます。調停が成立しなかった場合、調停人は、両当事者に対して仲裁人に付託することに合意するよう説得しなければなりません。仲裁人に付託することに当事者が合意しなかった場合、調停人は、調停の不成立について、3日以内にその旨の証明書を発行します。当事者が仲裁に付託することを合意した場合、書面による共同の要請をしなければなりません。
  • (e) 仲裁人は、要請を受けた日から30日以内または当事者が書面にて合意した延長期間に裁定し、裁定を当事者および政府に送付しなければなりません。仲裁人による裁定が最終のもので、上訴することはできません。裁定の有効期間は、2年を超えない範囲で仲裁人が決定します。


Q47. 労働裁判所への訴えは、どのような場合ですか?
A47. 団体交渉代理人、使用者または労働者は、労働法で規定されている権利、裁定や和解を享受するために労働裁判所に訴えることができます(労働法第213条)。30日以上継続したり、公共サービスであることを理由に政府により禁止されたストライキやロックアウトは直ちに労働裁判所に付託されます。また、労働争議について調停が成立せず、当事者が仲裁人への付託に合意しない場合、労働裁判所に訴えることができます(第211条)。

Q48. ストライキを行う要件はありますか?
A48. ストライキおよび使用者によるロックアウトについて、労働法第211条に規定されています。
(1) 事前通知の義務
 労働争議を起こす当事者は、本法の規定に基づき実施された調停により合意に至らなかった証明書を受領した後15日以内に、相手方にストライキまたはロックアウトについて通知し、開始日を知らせなければなりません。ストライキまたはロックアウトの開始日は当該通知の後7日~14日の間でなければなりません。または、労働裁判所に裁定を申請することができます。ただし、規定された方法で実施された秘密投票にて組合員の3分の2の同意を得られなかった場合は、団体交渉代理人は、ストライキの通知を出すことができません。
(2) 政府による禁止
 ストライキまたはロックアウトが30日を超えて実施された場合は、政府は禁止することができますが、ストライキまたはロックアウトの継続が公共の生活に深刻な問題は国益の損害を引き起こすと認めた場合は、30日以内であってもいつでも禁止することができます。
 公共サービスの場合は、政府は書面により、いつでもストライキまたはロックアウトを禁止します。
 上記のように政府がストライキまたはロックアウトを禁止した場合、当該労働争議は直ちに労働裁判所に付託されなければなりません。
(3) 一定期間の禁止
 事業場が新しいものであるか、外国人に所有されている、または外国人と共同で設立されている場合、ストライキまたはロックアウトは、生産を開始して3年間は禁止されますが、他の労働争議解決に関する規定は適用されます。
(4) 違法なストライキおよびロックアウト
 労働法第227条に、違法なストライキおよびロックアウトについて規定されています。

  • 規定された方法に基づく通知なしに又は通知に記載した日付の前後に又は労働法第225条に違反して、労働争議の宣言、開始または継続した場合
  • 労働法第209条(規定に従い使用者又は団体交渉代理人により提起された労働争議でなければ、労働争議とみなされない)に規定された方法以外で提起された労働争議の結果として宣言、開始または継続した場合
  • 労働法第211条(労働争議の解決)又は第226条(ストライキ又はロックアウトを禁止する労働裁判所及び労働上訴裁判所の権限)に基づき発出された命令に違反して継続した場合
  • 当該労働争議について調停または裁定が実施されている期間中に宣言、開始または継続した場合
  • ストライキまたはロックアウトについて、相手側に通知せずに宣言、開始または継続した場合
  • 労働法に規定された方法によらずに労働争議の宣言、開始または継続した場合
  • 労働法の規定の違反を継続した場合
  • 調停または裁定が実施されている期間中に宣言、開始または継続した場合

 違法なストライキの結果として宣言されたロックアウト、違法なロックアウトの結果として宣言されたストライキは違法とはみなされません。

Q49. ストライキの対応時の注意点はありますか?
A49. 使用者はストライキが労働法に従った適法なものであるかを慎重に見極めた上で適切に対応する必要があります。すなわち、適法性の主な判断要素として、①当該労働組織が労働法に基づき登録された労働組織であるか(労働組織の適法性)、②ストライキを行うための手続きが適切であるか(仲裁や調停を経ているか、適切な事前通知が行われているか等)(手続きの適法性)等が挙げられます。適法なストライキに対しては、要求事項を確認し、他社における待遇や一般的社会水準を考慮した上で適切に対応する必要があります。違法なストライキである場合、違法なストライキを行うことは認められておらず(労働法第196条)、そのようなストライキに加担した労働者は罰則が科されるため(労働法第294条)、労働組織にその旨を伝え、冷静な対応を求める必要があります。また、必要に応じて、労働局の職員等にも適切な対応を促す必要があります。
 なお、使用者は、調停、仲裁、労働裁判所、労働上訴審判所で係争中に、労働争議に関わった労働者に対して、不利になるような雇用条件等の変更をすることはできません。また、使用者は、調停人、仲裁人、労働裁判所または労働上訴審判所の許可なく、いかなる労働者に対しても、不正行為の場合を除き、解雇、懲戒等の措置をとることはできません(第228条)。

Q50. 労働組合以外に労使問題の協議のために設立すべき組織はありますか?
A50. 50人以上が雇用されている事業場の使用者は、労使の問題を協議するために、使用者および労働者の代表で構成される参加委員会を組織しなければなりません。労働組合が存在する事業場は参加委員会の設置は必須ではありません。労働組合が組織されていない事業場の場合、参加委員会の労働者の代表は、労働組合が組織されるまで、労働者の利益に関する活動を行うことができます(第205条)。参加委員会の主な機能は、労働者と使用者の間に事業場への帰属意識を教え込み発展させること、また、労働者の事業場に対するコミットメントと責任を意識させることとされています。具体的には、以下の通り規定されています(第206条)。

  • (a) 使用者と労働者の相互の信頼や理解、協力を促進するよう努めること
  • (b) 労働法を確実に適用すること
  • (c) 規律を守るよう育成すること、安全・労働衛生および労働条件を改善し維持すること
  • (d) 職業訓練、労働者の教育、家族の福祉を奨励すること
  • (e) 労働者とその家族の福祉サービスを改善する対策をとること
  • (f) 生産目標の達成、生産性の向上、生産コストの削減、無駄を防ぎ、生産の質を向上させること

 使用者および労働組合は、参加委員会による提案を実現するために必要な手段をとらなければなりません(第208条)。

Q51. 労働者の企業利益参加基金について、どのように定められていますか?
A51. 労働法にて、以下の通り定められています。
(1) 対象
 会計年度最終日に払込資本額が1,000万タカ以上または固定資産価値が2,000万タカの企業および政府が通知にて特定する企業や事業場は、これらの条件を満たしてから1か月以内に、労働者参加基金(以下、参加基金)および労働者福祉基金(以下、福祉基金)を設立しなければなりません(労働法第232(1)2)、第234(1))。また、100%輸出指向企業は、中央基金を設立しなければなりません(労働規則第212条(1))。
(2) 基金額
 毎年、年度の締め日から9か月以内に、前年度の純利益の5%を、801010の割合で、参加基金、福祉基金、労働者福祉財団基金に支払わなければなりません(労働法第234条(1))。
(3) 運営
 参加基金および福祉基金を設立後に、評議委員会を設立しなければなりません。同委員会は、規定の方法で選出された議長と委員で構成されます。
(4) 基金の利用
参加基金は企業の事業に利用されるか(労働法第2401))、評議委員会の決定で投資をすることができ(同条(2))、事業に利用される場合は、銀行の金利より2.5%高い率または普通株の申告した分配金額の75%のいずれか高い方を金利として支払わなければなりません(同条(3))。福祉基金は、規定に従って評議委員会が決定する目的と方法により活用することができます(労働法第234条)。
(5) 受益者への分配
毎年、参加基金の合計の3分の2は、受益者に同じ割合で現金で分配され、残りの3分の1は労働法に基づいて投資されます(労働法第242条(1))。「受益者」とは、職位や地位に関係なく、9か月以上勤務している者で、試用期間中の労働者も含みますが、使用者、共同経営者や管理員会の委員は除きます(2013年改正法第233条(1)(i))。年度の中途採用で6か月以上勤務している者は、その年から加入することができます(労働法第241条)。

【バングラデシュ会社法に関するQ&A】


Q1. バングラデシュで事業展開する際、どのような法律が適用されますか?
A1. バングラデシュで会社を設立し事業を展開する場合は、1994年バングラデシュ会社法が適用されます。その他、バングラデシュ投資開発庁(BIDA)によるガイドラインのほか、輸出加工区(BEPZA)や特別経済特区(BEZA)に進出する場合は、関連法令やガイドラインの規定が適用されます。また、必要に応じて、外国為替管理法(Foreign Exchange Regulation Act, 1947)、外国為替取引ガイドライン(Guideline for Foreign Exchange Transactions)も適用されます。労務については、労働法(Labour Act, 2006)や労働規則(Labour Rules, 2015)、税務については、所得税条例(Income Tax Ordinance,1984)やVAT(Value Added Tax and Supplementary Duty Act, 2012)等も重要です。

Q2. 会社法では、どのような会社の形態が規定されていますか?
A2. 会社の分類として、以下の3種類が定められています。

  • (1)株式会社 : 株主が出資の限度で責任を負います。
  • (2)保証有限会社 : 会社の清算時に、株主が、定款に定めた範囲で責任を負います。
  • (3)無限責任会社 : 株主が会社の債務に対して、無制限に責任を負います。

 株式会社は、さらに、非公開会社と公開会社の2種類に分けられます。

Q3. 非公開会社と公開会社の違いは何ですか?
A3. 非公開会社とは、付属定款上、(a) 株式譲渡制限の定め、(b) 株式または社債の引受公募を禁止する旨の定め、(c) 株主数(従業員を除く)を50名以下に限る旨の定めがある会社です(2条(q))。公開会社は、非公開会社に該当しない会社を意味します(同条(r))。付属定款を変更することで、非公開会社を公開会社に転換(231条(1))、公開会社を非公開会社に転換すること(232条(1))が可能です。

Q4. 株主は何名必要ですか?
A4. 非公開会社の場合は会社の従業員を除き、2名以上50名以下の株主(2条(q))、公開会社の場合には7名以上の株主を設置することが義務付けられています(5条)。規定の株主数が6か月以上継続して下回った場合、すべての株主は、株主数が規定数を下回っている期間に発生した会社の負債を個人的に支払う義務が生じます(222条)。

Q5. 会社の商号は自由に決めることはできますか?
A5. 会社の商号は、商業登記所へ登録します。既に登録している現存の会社と同じ商号や、類似しており誤認させる可能性が高い商号を登録することはできません(11条(1))。また、国際機関(UN)の名称等は、その機関からの許可がなければ使用することはできません(同条(5))。なお、支店や駐在員事務所/連絡事務所は、親会社の商号となります。

Q6. 減資手続きは難しいですか?
A6. バングラデシュ会社法では、減資を行うには、まず、株主総会の特別決議にて決定し(59)、裁判所に対して減資の申請を行う必要があります(60)。債権者は、裁判所が指定する日または期間内に、減資に対して異義申立てを行うことができ(62条)、裁判所は、一定期間内に異義申立てを行った債権者、当該申立てに係る債権者の負債額などをリスト化します(62条)。裁判所は、異議申立てに係る債権の債権者から同意を得るか、当該債権全額が弁済されるか、または相当額の担保が提供された場合には、減資を認める決定を行い(63条および64)、会社は、かかる決定を受けた後、裁判所の決定文その他所定の書面を登記官に提出し、減資の登記を行います(65条)。バングラデシュ会社法では、減資手続きには裁判所の許可が必要になるため、時間を要すると考えられます。

Q7. 取締役はどのように選任されますか?
A7. 取締役は、原則として株主総会普通決議によって選任されます。会社設立後、株主総会決議により取締役が選任されるまでの間は、設立時定款に当初取締役として記載された者が取締役となります(91条)。取締役として選任された者は、選任日から30日以内に登記官に対して同意書を提出しなければならず、かかる手続きが完了するまでは取締役として行為することはできません(93 条)。また、新たな取締役が選任された場合、選任の日から 14日以内に、登記官に対してかかる変更を通知する必要があります(115 条)。

Q8. 取締役は何名必要ですか?
A8. 取締役の最低人数は非公開会社の場合(公開会社の子会社を除く)は2名以上、公開会社および公開会社の子会社である非公開会社の場合は3名以上と規定されています(90条)。

Q9. 取締役の報酬は自由に決めて良いのですか?
A9. 会社法上、取締役の報酬の決定に関する明示的な規定は存在しませんが、取締役の報酬は株主総会により定める必要があると解されています。

Q10. 取締役の適格要件についての規制はありますか?
A10. バングラデシュの会社法に規定されている以下の不適格要件に該当しなければ、取締役になることができます。国籍や居住地についての規定はありません(90条、94条)。

  • (a) 管轄裁判所により心神耗弱と認定された者
  • (b) 破産者で復権していない者
  • (c) 破産手続きの審判中である者
  • (d) 自己が保有する株式の払込みを求められた日から6か月が経過しても払込みが未了の者
  • (e) 未成年者

 会社は、付属定款に規定することにより、上記の規定以外の不適格要件を定めることができます。

Q11. 取締役の常駐義務はありますか?
A11. 取締役の不適格要件に国籍や居住地についての規定がないことから、日本に居住する日本人がバングラデシュで設立された会社の取締役に就任することも可能で、常駐義務はありません。

Q12. 取締役の解任について、どのような規定がありますか?
A12. 会社は、臨時決議にて、株を保有している取締役を任期満了前に解任することができます。普通決議で後任の取締役を選任することができますが、その任期は、解任となった取締役の任期が基準です(106条(1))。

Q13. 取締役会を開催しなければなりませんか?
A13. 全ての会社は、3か月に1回以上かつ年に4回以上開催しなければなりません(96条)

Q14. バングラデシュにおいて監査人を選任する必要はありますか?
A14. 会社法ではすべての会社で1人以上の監査人を設置することが義務付けられています(210条)。監査人は、定時株主総会の普通決議で選任されます。ただし、候補者の本人の書面による同意がない限り、監査人として選任することはできません。通知を受けた監査人は、30日以内に同意書を登記官に提出しなければなりません。任期は翌年の定時株主総会までとなります。会社の最初の監査人は、会社の設立日から1か月以内に取締役会によって任命され、そのように任命された監査人は、最初の定時株主総会の終了まで在任します。

Q15. 監査人の解任について、どのような規定がありますか?
A15. 監査人の任期中の解任は、株主総会の特別決議によってのみ可能です(210条(9))。任期が満了する監査人は、再任が原則とされており、監査人が不適格事由に該当することになった場合や監査人自ら辞退する書面を会社に提出した場合、株主総会で再任しないことを決議した場合を除き、監査人は再任されなければなりません(210条)。

Q16. 監査人の適格要件について規定はありますか?
A16. 監査人は、バングラデシュ公認会計士法(Bangladesh Chartered Accountants Order, 1973)における公認会計士またはパートナー全員が公認会計士である会計事務所のいずれかでなければなりません。また、以下のいずれかに該当する場合は、監査人に就任できません(212条)。

  • (a) 当該会社の役員または従業員
  • (b) 当該会社の役員または従業員のパートナーもしくは被用者
  • (c) 当該会社から一定額の貸付を受けている者、当該会社に対する一定額の第三者の債務を保証している者
  • (d) 当該会社のマネージングエージェントである会社その他の団体の取締役、株主またはパートナーである者
  • (e) 当該会社のマネージングエージェントである法人の取締役、または当該法人の発行済み株式総数の5%以上の株式を保有する者

 マネージングエージェントとは、契約に基づき、取締役会の監督、指示に従い、会社の業務に関する管理を行う個人、または会社であり、具体的な権限・責任については、契約によって決定されます(2条)。

Q17. 監査人の報酬は自由に決めて良いのですか?
A17. 会社法上、原則として監査人の報酬は株主総会の普通決議により決定され、具体的な報酬額または決定方法が株主総会で決定されます。ただし、監査人が株主総会普通決議ではなく、取締役会またはバングラデシュ政府より選任された場合には、それぞれの選任者により決定されます。

Q18. 定款を作成する必要がありますか?
A18. バングラデシュでは、会社法に則った定款を作成する必要があります。定款には基本定款(Memorandum of Association)と付属定款(Articles of Association)の2種類があります。基本定款には、商号、本店所在地、事業目的、会社の種類、授権資本枠など基本的重要事項を記載し、付属定款には株主総会の運営方法などを定めるものとなっています。バングラデシュ会社法では、別紙1として標準付属定款が定められており、株式会社の場合、付属定款で明示的に除外されない限り、標準付属定款の内容が規定されているものとして取り扱われます(18条)。また、標準付属定款の各条項のうち、一定の条項については、これと異なる定めを置くことは認められていません(17条)。

Q19. 株主総会を定期的に開催する必要がありますか?
A19. バングラデシュでは、全ての会社は暦年に一度、かつ前回の定時株主総会から15か月以内に定時株主総会を開催しなければなりません。最初の株主総会は会社の設立日から18か月以内に開催しなければなりません(81条)。株主の要求があった場合に開催される臨時株主総会(84条)があり、全ての株式会社および株資本を有する保証有限会社の場合には、会社設立時(事業開始から1か月以上6か月以内)に開催される創立総会があります(83条)。

Q20. 株主総会の招集についてどんな規定がありますか?
A20.定時株主総会を含む株主総会及び特別決議のための株主総会は、書面にて21日前までに招集されます。ただし、定時株主総会の場合、出席した議決権のある全ての株主が書面にて同意したときは、当該通知期間を短縮することができます(85条(1))。

Q21. 株主総会の決議は、どのような種類がありますか、またどのような違いがありますか?
A21. バングラデシュの会社法における株主総会決議の種類は、普通決議、臨時決議、特別決議の3種類で、以下のように定められています。

  • (1) 普通決議
  • 決議内容:取締役の選任、取締役の報酬、配当、監査人の選任、監査人の報酬、決算書の承認等
  • 決議要件:出席した株主の過半数の賛成
  • (2) 臨時決議
  • 決議内容:株主である取締役の解任、会社清算に伴う債権者と会社間の合意事項の決定等
  • 決議要件:株主の4分の3以上が出席し、過半数の賛成
  • (3) 特別決議
  • 決議内容:定款変更、商号の変更、減資、検査役の選任、監査人の解任、会社の解散等
  • 決議要件:臨時決議の要件に加えて、招集通知を開催日の21日までに通知する必要があります(87条)。
  • 臨時決議および特別決議事項は、決議の日から15日以内に、登記官に対して通知義務があります。通知を怠った場合には、会社および役員に罰金が科されます(88条)。


Q22. 株主総会決議の定足数の規定はありますか?
A22. 会社法にて、付属定款で別段の定めを置かない限り、株主数6名以下の非公開会社においては2名、株主数7名以上の非公開会社においては3名、公開会社は5名と定められています(85(2)(b))。

Q23. 会社の決算期は自由に決めることができますか。
A23. バングラデシュの会計年度は7月から翌年6月末とされ、バングラデシュに存在する全ての事業体は6月末締めで年次決算を行い、監査および税務申告を行う必要がありましたが、外国法人、外国支店、駐在員事務所にのみ例外的に会計年度を親会社に合わせることができるよう法改正されました。

【バングラデシュのビザに関するQ&A

Q1. バングラデシュに出張や業務で滞在する場合、どのようなビザを取得する必要がありますか?
A1: バングラデシュの就労ビザは、主に以下の4種類(PIビザ、Bビザ、Eビザ、E1ビザ)があり、PIビザおよびEビザ取得者の家族には、それぞれFPIビザ、FEビザ、FE1ビザがあります。就労ビザは、在日バングラデシュ大使館またはバングラデシュの移民局(Department of Immigration and Passport)に申請します。バングラデシュに赴任して就労する場合は、PIビザまたはEビザの取得に加えて、ワークパーミット(労働許可証)の取得が必要です。ワークパーミットはバングラデシュ投資開発庁(BIDA)に申請します。

  • (1) PIビザ
  • 渡航目的: 投資、事業や組織の管理
  • 有効期間: 複数回入国で最長1

  • (2) Eビザ
  • 渡航目的: 雇用
  • 有効期間: 複数回入国で最長3ヶ月、90日までの滞在が可能

  • (3) E1ビザ
  • 渡航目的: プロジェクト、監督、メンテナンス、セットアップ、ソフトウェアの供給及び設置、その他関連事業
  • 有効期間: 複数回入国で最長6ヶ月、30日間の滞在が可能

  • (4) Bビザ
  • 渡航目的: 事業の開拓や事前調査のために短期滞在する者
  • 有効期間: 複数回入国で、最長1年。入国1回につき30日の滞在が可能
  •         (60日、90日が認められる場合があります)。
  •          ※Bビザでの入国者は、バングラデシュでの雇用は禁止


Q2. 就労ビザの申請のための必要書類は何ですか?
A2: 在日バングラデシュ大使館または移民局での就労ビザの申請には以下の書類が必要になります。

  • (1) PIビザ

申請書、パスポート原本及びコピー、写真、ホテル予約表、フライト予約表、日本の企業からのレター及びバングラデシュからの招聘状、BIDABEZA等関連機関からの承認レター
延長申請は、上記書類に加え、受入会社の事業の詳細(設立承認証、納税証明書)

  • (2) Eビザ

申請書、パスポート原本及びコピー、写真、ホテル予約表、フライト予約表、日本の企業及びバングラデシュの関連会社からの採用通知書、BIDABEZA等関連機関からの承認レター
延長申請は、上記書類に加え、ワークパーミット、ポリスレポート、納税者識別番号(1回目の延長申請)、所得税の納税証明書(2回目以降の延長申請)

  • (3) E1ビザ

申請書、パスポート原本及びコピー、写真、ホテル予約表、フライト予約表、日本の企業からの推薦状、バングラデシュの関連会社からの招聘状や契約書、BIDABEZAからの承認レター
延長申請は、上記書類に加え、ワークパーミット、ポリスレポート、納税者識別番号(1回目の延長申請)、所得税の納税証明書(2回目以降の延長申請)

  • (4) Bビザ

申請書、パスポート原本及びコピー、写真、ホテル予約表、フライト予約表、バングラデシュで登記しているビジネス組織からの招聘状、名刺、商工会の承認を受けた日本の企業からの推薦状(商工会の会員でない場合は、会社のプロフィール)
延長申請は、上記書類に加え、バングラデシュの商工会議所からの推薦状、ポリスレポート


Q3. 就労ビザを取得する場合、家族の同伴も可能ですか?
A3: PIビザおよびEビザの取得者の家族は、FPIビザおよびFEビザの取得が可能です。ビザの申請には、以下の書類が必要です。

申請書、パスポート原本及びコピー、写真、ホテル予約表、フライト予約表、配偶者・親に関する文書の写し、家族関係を証明するもの、関連省庁からの口上書(該当する場合)、BIDABEZA等関連省庁からの承認レター(該当する場合)


【バングラデシュの土地法制に関するQ&A

Q1. 外国会社がバングラデシュの土地を取得できますか?
A1. 外国会社でも会社登記をすれば、土地を所有することが可能ですが、外国人個人の所有は不可です。輸出加工区(EPZ)の場合は購入できませんが、長期使用権(30年間)を取得することができます。

Q2. バングラデシュの土地取得に関して最低取得額の規制はありますか?
A2: バングラデシュの土地取得について最低取得額というような規制は見られません。

Q3. バングラデシュの土地を取得する際の申請先はどの機関ですか?
A3: 土地売買の際、買主は必要な証明書を入手し、印紙税、キャピタルゲイン税、登記費用等を支払った後、地方自治体の登記事務所(Municipal Deed Registry Office)に登記を申請します。登記資料を取得後、土地事務所で所有者の名義変更登記を行い、売買契約を締結します。

Q4. バングラデシュの土地の登記はどのような効力を有していますか?
A4. バングラデシュにおいて個人や法人によって所有される土地は私有地として扱われ、登記の必要があります。この登記は土地所有の対抗要件となります。

Q5. バングラデシュにおいて、日本の借地借家法のように賃借人を保護する法令はありますか?
A5:
個別に賃借人を保護する法律はありませんが、1950年国家収用及び賃借法(State Acquisition and Tenancy Act, 1950)において、個人または企業による土地の所有について規定されています。

Q6. バングラデシュで不動産を取得する場合の印紙税率はいくらですか?
A6: 不動産を取得する場合の印紙税は、土地総額の35%です。

【バングラデシュの外資規制に関するQ&A

Q1. バングラデシュで外資が製造業を行うことは可能ですか?
A1. 外資が製造業を行うことは可能ですが、製品によっては外国資本率の規制があります。

Q2. バングラデシュで外資がサービス業を行うことは可能ですか?
A2. 外資がサービス業を行うことは可能です。

Q3. バングラデシュで外資が銀行業を行うことは可能ですか?
A3. 外資が銀行業を行うことは可能ですが、規制業種に含まれており、最低資本額の規定があり、政府の事業認可等が必要です。
また、銀行業の外資出資比率は60%まで認められています。

Q4. バングラデシュで外資が保険業を行うことは可能ですか?
A4. 外資が保険業を行うことは可能ですが、規制業種に含まれており、最低資本額の規定があり、政府の事業認可等が必要です。また、保険業の外資出資比率は60%まで認められています。

Q5. バングラデシュで外資が通信サービスを行うことは可能ですか?
A5. 外資が通信サービス業を行うことは可能ですが、規制業種に含まれており、政府の事業認可等が必要です。VOIP/IP電話サービスも規制業種です。

Q6. バングラデシュで外資が金融業を行うことは可能ですか?
A6: 外資による金融業も認められていますが、規制業種に含まれており、政府の特別認可等が必要です。

Q7. バングラデシュにおいて外国人雇用規制はありますか?
A7. 経営陣も含めた全従業員数に占める外国人の比率は、製造業で5%(1:20)、サービス業で20%(1:5)を超えてはならないとされています。外国投資申請時のバングラデシュ政府による審査基準にバングラデシュ人雇用の目安として、上記の割合が定められています。

【バングラデシュの外資奨励に関するQ&A

Q1. バングラデシュで外資奨励されている業種はありますか?
A1. 輸出志向産業、ハイテク産業、国産天然資源を活用する産業、国産原料に依存する産業などが奨励されており、法人税減免措置等優遇措置を受けることができます。また、輸出加工区(EPZ)や経済特区(BEZA)、ハイテクパーク進出企業への優遇措置が設定されています。

Q2. どのような業種が免税措置を受けることができますか?
A2. バングラデシュでは投資誘致のため、様々な免税措置が設置されています。主なものは以下の通りです。受けられる免税措置は、業種や事業地域により異なるため、最新情報の収集が肝要です。
(1)奨励産業に対する主な優遇措置

      • ・法人所得税免除(5年間または7年間)
      • ・外国人技術者の所得税免除(3年間)
      • ・電気料金の非課税(15年間)
      • ・上場企業の株式譲渡に関するキャピタルゲインの非課税
      • ・輸入機械やスペアパーツに対する免税 など


奨励産業

・ プラスチック
・ 海外労働者派遣
・ 造船
・ 船舶整備
・ 観光
・ 冷凍魚介類
・ 家庭用繊維製品(寝具、カーテン、ハンカチ、タオルなど)
・ 宝石
・ 再生可能エネルギー(太陽光、風力)
・ 医療薬品
・ 薬用植物資源による製薬
・ リサイクル製品
・ 病院・クリニック
・ 自動車整備
・ ハンドメイド製品
・ 電気関連(LEDCFL バルブなど)
・ 茶
・ 種子
・ 玩具
・ トイレタリー製品
・ 香水
・ 家具
・ セメント
・ 香水
・ ポリマー製品の製造

(出所:JETRO「投資ハンドブック(更新版)」)

(2)所得税条例(1984)に基づく免税
所得税条例(1984)に基づき免税される産業活動として以下が挙げられています。免税措置を受けるためには、① 投資開発庁(BIDA)への登録、国家歳入庁(NBR)への申請、申請から45日以内に国家歳入庁(NBR)からの証明書の受領、が必要となります。

・ 原薬及び放射性医薬品
・ 農業機械
・ 部品製造を含む航空機の重整備サービス
・ 人工繊維の製造
・ 自動化技術を採用したレンガ
・ 自動車、部品およびコンポーネントの製造
・ 自動化およびロボット設計製造(部品及びコンポーネントを含む)
・ 家電製品(ブレンダー、炊飯器、電子レンジ、電気オーブン、洗濯機、電磁調理器、浄水器など)
・ 殺虫剤、農薬
・ 皮革製品
・ LEDテレビ
・ 地元で生産された果物と野菜の加工
・ 携帯電話
・ バリア避妊薬とコンドーム
・ タイヤ製造
・ 電子機器の基本コンポーネント(レジスタ、コンデンサ、トランジスタ、集積回路、多層PCBなど)
・ 自転車(部品を含む)
・ 天然肥料
・ バイオテクノロジーを利用した農産物
・ ボイラー(部品および機器を含む)
・ コンプレッサー(部品を含む)
・ コンピューターハードウェア
・ 電気変圧器
・ 家具
・ ナノテクノロジーを基本とした製品製造
・ 石油化学製品
・ 医薬品
・ プラスチックのリサイクル
・ 繊維機械
・ 組織移植
・ 玩具製造


(3)事業地域ごとの法人所得税の免税措置
 事業地域に応じて、5年間又は10年間の法人所得税の免税措置を享受することができる。
5年間の免税の対象地域は、ダッカ管区、チッタゴン管区(ダッカ県、ナラヤンガンジュ県、ガジプル県、チットグラム県、ランガマティ県、バンドルボン県、カグラチュリ県を除く)である。
10年間の免税の対象地域は、ラジシャヒ管区、クルナ管区、シレット管区、バリサル管区(中核都市(City Corporation)を除く)で、ランガマティ県、バンドルボン県、カグラチュリ県は該当する。

Q3. 経済特区(Bangladesh Economic Zones Authority, BEZA)の進出企業に対して、どのような優遇措置がありますか?
A3. 以下のような法人税の減免措置を受けることができます。
(1)ディベロッパーに対するインセンティブ

    • 12年間の法人所得税の免除
    • 電気料金にかかる付加価値税の免除
    • 石油製品を除く現地購入に対する付加価値税の免除
    • 関税/消費税の免除
    • 土地登記の印紙税と登録料の免除
    • 融資/クレジット文書からの登録に対する印紙税の免除
    • 配当税の免除

(2)投資家に対するインセンティブ

    • 10年間の法人所得税の免税
    • 原材料等の輸入税免除
    • 関税保税地域として宣言された経済特区
    • 配当税の免除
    • 資本と配当の完全な返還
    • 外国直接投資の上限なし
    • 国内一般関税地域で輸出指向工業化のために100%後方関連産業の原材料と付属品の販売
    • 完成品の20%の国内一般関税地域での販売
    • 国内一般関税地域への外注契約の許可
    • 土地/工場地の賃借人の登録にかかる印紙税及び登録料の50%免除
    • すべての公共サービスに対する付加価値税の免除
    • 輸出税の免除
    • 車両輸入のための関税の免除
    • 二重課税防止協定による二重課税の免除
    • 外国人駐在員(IT関連)の所得税の免除
    • 現行法に従った外国融資の許可
    • 非居住者の外貨口座
    • 現地及び合弁企業のための外貨口座
    • 外国人投資家は自由に合弁事業に参加可能
    • ロイヤルティ、技術料等に対する免税
    • 株式譲渡によるキャピタルゲインに対する免税
    • 外国人株主による現地株主及び投資家への株式譲渡
    • 工業ユニットにつき外国人の労働許可証の発行は、全役員/従業員の最大5%まで許可
    • 新たな外国投資として扱われる送金可能な配当の再投資
    • 75,000米ドル以上の投資に対する居住者ビザの付与
    • 1,000,000米ドル以上の投資に対する市民権の付与


Q4. 輸出指向産業に対する優遇措置はありますか?
A4. 輸出指向産業、輸出関連産業には、以下の優遇措置を受けることができます。

    • 輸出から生じた所得の50%の免税
    • タバコ商品を除き輸出税免除
    • 輸出用製品の保税倉庫施設
    • 税払い戻し制度
    • 特定の輸出品への輸出補助金及び財政的インセンティブ

Q5. IT関連企業に対する優遇措置はありますか?
A5. 政府はデジタル・バングラデシュへ向けてのロードマップを作成し、2018年に「ICT Policy」を承認し、IT・ソフトウェア会社は、IT産業の工業地区(ハイテク・パーク)、ICTビレッジまたはソフトウェア技術ゾーン、ITパーク等に設立した場合、10年間法人税が免除されます。また、ハイテクパークの企業の配当に対する50%の免税、株の譲渡によるキャピタルゲインに対する50%の免税をそれぞれ10年間受けることができる等の優遇措置が設けられています。

Q6. 輸出加工区(Export Processing Zone, EPZ)内の企業に対する優遇措置はありますか?
A6. 以下のような優遇措置を受けることができます。
(1)法人税の免税措置
2012年1月以降に設立した企業の場合、免税の割合は地区によって異なります。
モングラ、イシュワルディ、ウットラ輸出加工区の免税率は以下の通りです。
免税期間 免税率
最初の3年間(1年目、2年目、3年目) 100%
次の3年間(4年目、5年目、6年目) 50%
次の1年間(7年目) 25%



チッタゴン、ダッカ、アダムジー、コミラ、カルナフリ輸出加工区の免税率は以下の通りです。
免税期間 免税率
最初の2年間(1年目、2年目) 100%
次の2年間(3年目、4年目) 50%
次の1年間(5年目) 25%



(2)その他の財政的な優遇措置
    • ・建設資材、機械、設備、部品等の輸入関税免除
    • ・原材料の輸入関税および完成品の輸出関税免除
    • ・二重課税の回避
    • ・配当課税の免除
    • ・一般特恵関税制度が利用可能
    • ・機械および工場に対する加速償却の許可
    • ・ロイヤリティ、技術指導料、コンサルティング料の送金許可
    • ・EU、カナダ、ノルウェー、オーストラリア等への割当無制限の免税措置
    • ・外資100%による企業進出が可能
    • ・最恵国待遇を享受
    • ・海外投資、国内投資の上限なし
    • ・資本金、配当の本国への送金許可
    • ・海外からの外資ローンの自動承認
    • ・非居住者外貨預金の許可
    • ・外資と地場の合弁、または100%地場資本出資の企業に対する外貨口座運用の許可


(1)主な便宜供与

    • ・加工品構成明細表(UD)、輸入許可証(IRC)、輸出許可証(ERC)が不要、および保税ライセンスの更新が免除
    • ・BEPZAが発行する労働許可
    • ・安全で保護された保税地域
    • ・オフショアバンキングが利用可能
    • ・手形引受書類渡し(DA)の輸入の許可
    • ・見返り信用状
    • ・委託加工形態による輸出入
    • ・国内一般関税地域からの輸入
    • ・国内一般関税地域への販売(10%)
    • ・工場現場での通関手続き
    • ・EPZ内外の輸出志向型産業への下請けの許可
    • ・外国企業の移転の許可


Q7.官民連携協会(Public Private Partnership, PPP)のプロジェクトに対して、どのような優遇措置がありますか?
A7. 道路、空港、鉄道等のプロジェクトに従事している企業によるPPPプロジェクトに対して免税措置が付与されるほか、PPPプロジェクトの法人所得税、株資本の譲渡から生じるキャピタルゲインの所得税がそれぞれ10年間免除されます。また、外国人従業員は、雇用のときから50%の免税を3年間受けることができます。


【バングラデシュの解散、清算及び破産に関するQ&A

Q1. バングラデシュにおける解散や清算はどのような種類が存在しますか?
A1. 会社の清算の方法について、以下の3種類が規定されています(234条)。
 (1) 裁判所による清算
 (2) 任意清算(株主による任意清算、債権者による任意清算)
 (3) 裁判所監督による清算

Q2. 裁判所による清算とはどのような場合に行われますか?
Q2. 裁判所による清算は、申立て後、一定の条件を満たす場合に、裁判所の決定により強制的に清算手続きを開始する手続きです。下記のいずれかに該当する場合に行われます(241条)。
 (1) 裁判所による清算を行う旨の特別決議がなされた場合
 (2) 商業登記所への報告書の提出を怠った場合
 (3) 会社が設立以降1年以内に事業を開始しない場合、または1年以上会社の事業が行われない場合
 (4) 最低株主数(非公開会社について2名、公開会社について7名)を下回った場合
 (5) 債務の弁済ができなくなった場合
 (6) その他裁判所が会社の解散が正当かつ衡平であると判断した場合

Q3. 任意清算とはどのような場合に行われますか?
A3. 裁判所の関与を経ずに株主または債権者が主体となって会社を清算する手続きで、下記のいずれかに該当するに行われます(286条)。
 (1) 付属定款で定めた会社の存続期間が満了した場合、付属定款で定めた解散事由が発生し、かつ、株主総会において任意清算の普通決議がされた場合
 (2) 株主総会の特別決議により会社の任意清算を決定した場合
 (3) 債務超過により事業継続が困難となり、清算が望ましいと株主総会臨時決議により決定した場合

Q4. 裁判所監督による清算とはどのような場合ですか?
A4. 任意清算手続き中に、株主または債権者による申立てがあった場合には、裁判所は当該申立てを検討の上、裁判所の監督下で任意清算を行う旨の命令を出すことができます(316)。裁判所は、かかる場合、追加の清算人の選任その他必要な命令を出すことができます(319条、321)

Q5. 解散・清算の場合、取締役や会社の権限はどうなりますか?
A5. 裁判所による清算、任意清算、裁判所監督による清算の手続きのいずれにおいても、清算人が選任され、清算人が原則として会社の清算手続きを行います。清算人は、会社の動産または不動産の公的競売または任意売却、その他会社の清算または資産分配に必要な一切の行為を行う権限が認められています(262 条)。会社は、清算手続き開始後は、清算人への通知なしに財産を譲渡等することはできません。その他、株主による任意清算の場合、清算人の選任後は、会社が株主総会決議によりまたは清算人の決定により別途定められない限り、取締役のすべての権限は停止すると規定されています(292条)。また、債権者による任意清算の場合、清算人の選任後は、調査委員会または調査委員会が設置されていない場合には債権者集会により別途定められない限り、取締役のすべての権限は停止すると規定されています(301条)。

Q6. バングラデシュで破産する場合の手続きはどうなりますか?
A6. 裁判による清算の「債務の弁済ができなくなった場合にあたる」と考えられますので、一定の要件を満たす申立人による申立て後、一定の条件を満たす場合に、裁判所の決定により強制的に清算手続きを開始することになると考えられます。

【バングラデシュの裁判及び仲裁制度に関するQ&A

Q1. バングラデシュの裁判制度はどのようになっていますか?
A1:
バングラデシュにおける裁判は、立法権および行政権から独立した、バングラデシュ最高裁判所と下級裁判所によって担われています。下級裁判所には、地方裁判所と高等裁判所がありますが、歴史的経緯から、バングラデシュには、高等裁判所が首都ダッカにしか存在せず、高等裁判所と最高裁判所が一体となっています。最高裁判所のうち、高等裁判所の機能を担うのが高等裁判所部で、最高裁判所の機能を担うのが上訴部です。高等裁判所部は、下級裁判所の判決に対する上訴に管轄を有するほか、国民の基本的人権を保障するために必要な指令(directions)および命令(orders)を発する権限を有しています。また、上訴部は、高等裁判所部の判決、命令などに対する上訴について管轄を有するとともに、憲法で保障された国民の基本的人権に反する制定法を無効とする違憲立法審査権を有しており、終審裁判所たる最高裁判所としての機能を有しています。また、通常の民事裁判所のほかに、労働問題に管轄を有する労働裁判所、公務員に関する紛争について管轄を有する行政審判所、租税について管轄を有する所得税審判所および付加価値税審判所、金融機関の貸金債権に関する請求ついて管轄を有する貸金裁判所などの司法機関及び審判所が存在します。

Q2. バングラデシュの民事訴訟制度はどのようになっていますか?
A2:
バングラデシュでの民事訴訟は、裁判所に対して訴状を提出することで開始されます。一般的に民事訴訟手続は次の5つの段階に分けられます。なお、バングラデシュの民事訴訟および刑事訴訟では陪審制度や参審制度は設けられていません。
(1) 召喚状の送達
(2) 答弁書の提出
(3) 証拠の提出
(4) 第1回目期日と争点の画定
(5) 証拠開示
(6) トライアル
(7) 判決

Q3. バングラデシュにおいて日本の判決は執行されますか?
A3: 日本の裁判所の判決は、判決の手続きが正義に反するときやバングラデシュ法に反する請求であるとき等を除いて、判決された事項について終局のものと承認されます(民事訴訟法13条)。バングラデシュにおいて日本の判決を執行するためには、バングラデシュで、日本の判決に基づき訴訟を提起しなければなりません。この場合、裁判所は、一定の場合を除いて、請求の実態について再度判断をすることなく、日本の裁判所の判決を終局のものと認めます。

Q4. バングラデシュにおいて労働事件に関する特別な取扱は存在しますか?
A4: 2006 年労働法及び 2013 年労働法改正法は、当事者は交渉により紛争を解決するよう努力しなければならず、交渉により解決できない場合には、調停人を選任して調停手続により紛争を解決するよう務めなければならず、調停手続によっても紛争を解決できない場合には、調停人は、紛争を仲裁に付すよう当事者を説得しなければならないとしています。労働事件を扱う裁判所は、労働裁判所と労働上訴審判所があります。労働裁判所は、労働に関する民事事件および刑事事件の裁判を行い、裁定をし、刑を決定して言い渡すことができます(労働法第214条)。交渉、調停および仲裁も規定されています。労働上訴審判所は、労働裁判所の命令、裁定、言い渡しを変更、破棄し、別の労働裁判所に事件を移送することができます(労働法第218条)。

Q5. バングラデシュに調停制度は存在しますか?
A5: 裁判外の和解は、民事裁判の係属前であると係属中であるとを問わず、いつでも当事者の合意により行うことができます。離婚訴訟など一部の訴訟については調停手続を利用し、又は考慮することが必要とされていますが、民事訴訟一般について、調停手続を経ることは必要とされていません。

Q6. バングラデシュにおける仲裁制度はどのようになっていますか?
A6: バングラデシュは外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)を留保なしに批准しています。2001年仲裁法(Arbitration Act, 2001)により、外国仲裁判断は、ダッカの地区判事裁判所の承認を得ることで裁判所の判決と同様に執行できるとされており、外国仲裁判断の承認執行が認められています。実際に、多くの外国企業において、バングラデシュ企業と取引する際に、バングラデシュ若しくは自国、又は第三国を仲裁地とする仲裁合意が行われています。バングラデシュ国内で利用できる常設の仲裁機関としては、20114月に運営を開始したバングラデシュ国際仲裁センター(Bangladesh International Arbitration Centre, BIAC)があります。

【バングラデシュの特許に関するQ&A

Q1.どのような発明なら、特許を取得できますか?
A1: バングラデシュは、パリ条約およびWTO協定に加盟しており、2003年に施行した特許・意匠法にて特許について規定されています。特許権の期間は出願日から16年で、申請により延長することができます(特許・意匠法第14条、第15条)。特許を受けることができない発明として、1) 新規性がない発明、2) 有用性がない発明、3) 法律または道徳に反する発明が挙げられています(第2条、第69条)。英語またはベンガル語で出願することができます。

【バングラデシュの商標に関するQ&A

Q1. 商標を登録すると,どんなメリットがありますか?
A1: 商標法では、登録していない商標は侵害に対する損害賠償の訴訟を提起する権利を有しないと規定されています(商標法第24条)。商品又は役務に関する商標の所有者として登録簿へ有効に登録されることにより、その者は、それらの商品又は役務に関する商標を使用し、同法の規定に基づき、当該商標の侵害に関し救済を受ける排他的権利が与えられます。また、商品又は役務に関する商標の登録された所有者以外の何人も、登録された所有者の同意なくその商標を使用してはならないと規定されています(第25条)。一方で、バングラデシュの特許意匠商標庁は、審査官の人員が限られていることや、審査の電子化も遅れていることから審査の時間を要し、商標の登録まで3年以上かかるというのが現状です。

Q2. 商標の出願の流れは,どのようになっていますか?
A2: 「出願審査→公告登録」という流れになっています。出願から登録までの所要期間として、3年程度かかるとのが現状です。
(1) 登録出願(第15条)
商標の登録は、所定の方式で登録官に書面で自己の商標登録局を申請します。申請は商品又は役務のすべての区分について個別に行われ、出願は受理の順番に従って審査されます。出願人又は共同出願人のいずれもバングラデシュ国内で事業を営んでいない場合でも、最初の出願において明記するとおりバングラデシュ国内の送達住所として記載された場所に領域的管轄権を有する商標登録局の事務所に出願することができます。提出を受けた登録官は、(a) 制限を付さず出願を受理する、(b) 拒絶理由を付して出願を拒絶する、(c) 該当する場合、登録官が適当と認める改訂、修正、条件又は制限を条件として出願を受理する、のいずれかの対応をとります(商標法第15条)。
(2) 出願の公告(第17条)
商標登録出願が受理されると、制限を付さない受理であるか条件又は制限を付すかに関わらず、登録官は原則として、受理後できる限り速やかに、該当する場合は受理された条件又は制限とともに受理した出願を所定の方式で公告します。
(3) 異議申し立て、査定(第17条)
登録に対する異議申し立てがある場合は、登録出願の公告日から 2 月以内に、所定の手数料を支払い、登録に対する異議申立ての通知書を所定の方式で登録官に送付することができます。登録出願人からの意見書の提出、申立人および出願人が希望する場合は聴聞、登録官が当事者らの聴聞を行い証拠を検討した後、登録の査定をなすべきか否かおよびかかる査定は条件または制限を付すべきか否かを判断します。なお、登録行為に関するすべての異議申立ては、申立の通知が行われた後、120業務日内に終えるものとすると規定されています。
(4) 登録(第20条)
以下のいずれかの場合、登録官は登録簿に当該商標を登録し、当該商標の効果は登録出願が行われた日から生じます。
(a) 商標を商標登録簿へ登録する出願が受理されたとき。
(b) 出願に異議申立てはなく、異義申立て通知期間が満了したとき。
(c) 出願に異議申立てがあり、その異議申立てに対し出願人を支持する決定がなされたとき。
商標登録に際して、登録官は出願人に対し商標登録局の印を押した登録証明書を発行します(第20条)。

Q3. 商標登録の登録要件について、どのような規定がありますか?
A3: 商標法第6条に登録簿の登録要件が規定されています。
商標は次に掲げる主要部の少なくとも一つが含まれているか、又は構成要素の少なくとも一つでない限り、登録簿に登録されません。
(a) 特別又は特定の方法で表現される会社、個人又は法人の名称
(b) 出願人出願人又はその事業における何らかの前身の標示
(c) 1以上の考案された単語
(d) 商品又は役務の特性又は品質に直接言及せず、かつ、一般的な意味に照らして、地理的名称、名字、個人名、若しくはその一般的略称、又はバングラデシュ国内の党派、カースト又は部族の名称ではない1以上の単語
(e) その他の識別性のある標章
「識別性のある標章」という表現は、専有権者の商品又は役務を、当該取引における同種の商品又は役務から識別する商標をいい、一般的にも、商標登録が企図されている場所においてもかかる関連性が存在しない場合には、制限が付されます。

Q4. 登録できない商標や制限にはどのようなものがありますか?
A4: 商標法に登録が禁止されている事項や制限が規定されています。
(1) 商標として登録が禁止されている標章・標章の一部(商標法第8条)

  • (a) 恥ずべき又は節度を欠く事項が含まれる標章
  • (b) 標章の使用がそのとき施行されている法令に反するもの
  • (c) 標章の使用が誤認、混同を引き起こすおそれがあるもの
  • (d) バングラデシュ国民のいかなる階級であれ宗教的感受性を傷付けるおそれがある内容を含む標章
  • (e) 国家又は、国際条約、憲章若しくはその他の法律文書によって創設された国際組織の紋章、旗又はその他の記章、それらの名称又は名称の略称若しくは頭文字、それらが採用する公的標識又は印章と同一若しくは模倣又は要素として含む標章。ただし、その国家又は組織の所轄当局が認めるものを除く。
  • (f) その他に、裁判所で保護を受けることができない標章
  • (g) 出願が不正の目的で信義に反して行われる標章

(2) 化学物質名の禁止(第9条)
(3) 同一又は誤認を生ずるほど類似する商標の登録禁止(第10条)
(4) 生存者又は死亡者(死後20年以内)の名称使用(第11条)
生存者又は商標登録出願が死後 20 年以内である者と関係があると誤信させる商標の登録出願が行われた場合、出願人から、かかる生存者又は場合に応じ出願人かかる生存者又は場合に応じ死亡者の法定代理人による当該商標に表される関連性に係る書面による同意書の提出がない場合は、出願の審査開始を拒絶されることがあります。

Q5. 指定商品・指定役務を指定する際,どのように指定すれば良いですか?
A5:
バングラデシュはニース協定に加盟しており、商品・役務の分類にはニース協定で採択された分類が採用されています。また,バングラデシュでは,多区分にわたる商品・役務の指定は認められません。

Q6. バングラデシュへ商標出願する際,マドプロ制度を利用する事はできますか?
A6: バングラデシュはマドプロに加盟していませんので、マドプロ制度を利用することはできません。

Q7. 出願した商標が登録されました。何年間権利を主張できますか。
A7: 商標登録の期間は7年間ですが、更新することができます。原登録または場合に応じて最新の更新の期間満了日から10年間更新することができます(商標法第22条)。

Q8. バングラデシュでも、不使用を理由に商標権の取消を請求できますか。
A8: 登録商標がバングラデシュにおいて5年間使用されない場合は、不使用を理由とする登録簿からの削除の対象となります(商標法第42条)。

【バングラデシュの弁護士制度に関するQ&A

Q1:バングラデシュの弁護士資格はどうすれば取得できますか?
A1:バングラデシュの弁護士(Advocate)資格は、一定の法曹教育をうけ弁護士試験に合格した者に資格が付与されます。弁護士のうち、高等裁判所において法曹活動に従事する場合は、別途試験を経て認定を受ける必要があります。弁護士の資格は、認定された国内外において法学士以上の学位を有するバングラデシュ人にのみ限定されています。この資格を有する者は、10年以上の経験を有する弁護士の下で6か月研修しなければならず、当該研修を終えて初めて弁護士会の実施する弁護士試験を受験できます。弁護士試験の仕組みは、択一試験の受験→論文試験→口述試験で、口述試験に合格したものが弁護士会に登録することができ、それによって弁護士として活動できます。

Q2. バングラデシュに弁護士会はありますか?
A2: バングラデシュには、以下の弁護士会があります。
(1) バングラデシュ弁護士会(Bangladesh Bar Council
バングラデシュ弁護士会は,バングラデシュの各弁護士会及び弁護士を統括する中心的組織です。バングラデシュ弁護士会の具体的な役割の概要は以下の通りです。

  • (a) 弁護士の認定、弁護士試験の管理、弁護士の罷免等
  • (b) 当該役割の準備及び維持
  • (c) 弁護士倫理規定の制定
  • (d) 弁護士の懲戒審査及び処分
  • (e) 弁護士の権利及び利益の保障
  • (f) バングラデシュ弁護士会の資金管理
  • (g) その委員の選挙の準備
  • (h) その委員会の手続の制定
  • (i) 法曹教育の促進
  • (j) 所定のその他の役割
  • (k) 上記の役割の実行に必要となる一切の行為
  • バングラデシュ弁護士会の委員の定数は 15 名であり,1名はバングラデシュ司法長官(Attorney-General)が兼任します。

(2) 各弁護士会
各弁護士会は,バングラデシュ弁護士会の認定に基づいて、弁護士によって自主的に結成される団体であり、最高裁弁護士会(Supreme Court Bar Association)と地方弁護士会の2つに分類されます。バングラデシュの弁護士は、いずれかの弁護士会に所属しなければなりません。最高裁弁護士会は、高等裁判所への従事を認められて1年を経過した弁護士のうち、入会を希望し、面接に合格した者によって構成される弁護士会です。

Q3:バングラデシュに司法書士や行政書士と同様の資格はありますか?
A3:バングラデシュには、司法書士や行政書士のような隣接法律職は存在せず、弁護士がこれらの職務も包括して行います。

【渡航に関するQ&A

Q1. バングラデシュへの入国時、申告なしで持ち込み可能な金額はいくらですか?
A1. 入国時に申告なしで持ち込み可能な現金の上限額は、10,000米ドル又はその相当額です。202023日付のバングラデシュ銀行の通達にて、以前の5,000米ドル又はその相当額から10,000米ドル又はその相当額に引き上げられました。一方、入国時のArrival Cardには更新されていないものもあり、「5,000米ドル又はその相当額の外貨」という記載が残っていることがあります。また、そのように持ち込んだ外貨は出国時に持ち出すことが認められています。